食べる事は生きる事。ものすごく怖くてありえないほど辛い。
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炭水化物が圧倒的に不足している事を指摘されても、私は中々糖質を受け入ることが出来ませんでした。しかしこのままの体重を維持していれば、いずれ入院になってしまいます。
少しでも見た目の“痩せ”を維持しようとした私は、先生の「体重を増やせ」という指導に、筋肉増量という形で反抗しようとしました。
「そうだ！たんぱく質をもっと摂って筋肉量を増やせばいいんじゃね？筋肉は脂肪より重い。引き締まるし、それに代謝もあがって痩せやすい体になる。一石二鳥じゃん。」
そう思ったのです。
ところが
それは知らなかった。
そして結局糖質摂取の道を進む事になったのです。
それは物凄く怖くて、ありえないほど辛い道のりでした。
さながらゴルゴダの丘へ向かうイエス・キリストの気分でした。辿り着く先には絶望しかありません。
「食べるのが怖い」
「太りたくない」
そんな事を言うと周囲に怒られたので、家では自分を押し殺してごはんの後にアイスクリームとか、兎に角食べ物を美味しく食べている“ふり”をしていました。
受診当日の朝はご飯を無理やり詰め込んで体重を増やしました。
診察前の体重測定では
「どうせ先生は数字しか見てない」
そう思って、ポケットに携帯を突っ込んで体重のかさ増しもしました。
周りはみんな敵でした。
私の気持ちを聞いてくれる人なんかいなくて、“美味しく食べる”自分がまるで意思の無い操り人形になったかのように思えて、少しずつ増えていく体重にただ呆然と立ち尽くすだけでした。
先生「別にご本人が悩んでいる話をないがしろにするわけじゃないんですよ。幼少期からの違和感とか社会生活の上での困難、性別違和とか、よくわかってますよ。それもいずれどうやって対処していくかを考えなければならない。いけないけれども、でも体が資本だから体重を増やす事が先決なんです」
そうして私は納得しきれないまま、死ぬような思いで31→34kgまで体重を増やしました。
結局「ある程度体重が維持できているから」という事で地元の病院に戻る事が決まったのですが、心中は複雑でした。
「それは理由にならないよ」と言われてしまったけれど、私は大学病院に通っているという事で自分を
「重い病気なのだ」
と納得させていたのです。
また、健康になって大学病院を離れるという事は、『死』が一層遠のく事を意味しているように感じられました。だから先生にどれだけ厳しい事を言われても、私は転院したくなかったのです。
そして地元の病院に送り返され、生活上の困難は福祉任せ。
そこに見た医師の“業務”感と、自分を待っている社会がとても無情なものに思えて、私は本当に悲しかったんです。
「私はこんなに頑張って体重を増やして、今でもこんなにも辛いのに、先生にとって私は仕事の一環でしかないんだ」
それからしばらくして支援者と面談する機会があったのですが、
怒りや悲しみの真っただ中にいた私は、支援者の事を疎ましく思ってました。
彼らは自分の持てる知識(スピリチュアル含む)を総動員して私を救おうとしましたが、私が本当に寄り添ってほしかったのはスピリチュアルに傾倒している支援者ではなく、医療関係者だったんです。
「中には頑なに体重を増やそうとしない人もいるのに、頑張った私は最終的には福祉に丸投げされるんだね。頑張った分だけ損なんだ。まじめなだけ損をするようになっているんだ。」
だから私は同じ摂食障害の女性を敵視してしまうのです。
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